2017/5/16 火曜日

ドクターハートのつぶやき

Filed under: キャンパスライフ — yo @ 14:02:59

夜間呼吸困難と起座呼吸

「呼吸困難のために夜間睡眠中に覚醒する」ことは、心不全の初発症状であることがあります。心筋梗塞、弁膜症などで、左心室から大動脈への血液駆出が旨く出来なくなると、その上流(肺血管、右心室、右心房、大静脈などの右心系)に血流の滞り(鬱滞)が起こり、静脈圧が上がります。このとき、静脈系では、これらのいわばメインストリートから脇道の組織間の静脈(リザーバー)へと、静脈血の移動(シフト)、そしてそこでの溜め込み(プーリング)が起こり、静脈圧をあげないように作用します。さらに静脈圧の上昇があると静脈から血液水分が肺組織の間に、漏れ出して、肺水腫が生じ、肺胞での換気を阻害し、呼吸困難、低酸素状態となります。即ち、心不全です。この現象は、右心系への静脈環流量が増加する夜間安静臥床中に多く起こります。

一方、起座呼吸とは、寝ている状態(臥位)では苦しかった呼吸状態(呼吸困難)が上半身を起こした状態(起座位)で軽くなることをいいます。臥位から起座位にすることによって、上半身の静脈血は下半身に移動し、肺の静脈圧は低下し、肺水腫は改善されます。その結果、呼吸困難は改善されます。やはり、心不全の大事な症状です。

余談ですが、起座呼吸を見た家人が、楽にさせるつもりで、何とか寝かせようと努力、かえって苦しくさせてしまったという、笑えない話も聞いたことがあります。

一見、矛盾しているようですが、安静を保つのには最適と思われる臥位よりも、体の負担になる起座位の方が、心不全の呼吸困難の改善には有用であるということです。

夜間呼吸困難、起座呼吸、共に心不全の症状として、記憶しておいて下さい。

因みに、臥位、起座位は、ごく普通の医学用語ですが、一般的には使われていないようです(国語辞典に掲載されていない)

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